やさしい税務会計ニュース
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文書作成日:2019/09/10
役員を減給処分した場合の法人税法上の取扱い

[相談]

 先日、私が経営する会社に対して労働基準監督署の立ち入り調査(臨検)が入り、未払い残業代の支払いを含めた、いくつかの是正勧告および是正指導を受けました。
 この処分は経営成績や従業員のモチベーションに著しい悪影響を与えることから、社長はじめ役員一同がその責任を取り、向こう3ヶ月間、各人の役員報酬を20%減額することを取締役会で決議しました。

 ところで、法人税法上、年度途中で役員報酬額を変更した場合には、法人税法上の経費(損金)に算入できる金額に影響があると聞いたことがあるのですが、本件ではどのように取り扱われるのでしょうか。


[回答]

 ご相談の場合については、減額期間中も、減額前と同額の役員報酬が支払われていたものとして取り扱われることから、法人税法上は特段の影響はないものと考えられます。


[解説]

1. 役員給与の法人税法上の取り扱い(定期同額給与)

 法人税法上、会社(法人)が役員に対して支給する給与の額のうち、「定期同額給与」等に該当しないものは、損金の額に算入されないことと定められています。

 この「定期同額給与」とは、原則的には、その支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとである給与であって、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいうものとされています。

 このため、同じ事業年度中に役員報酬額が変動したような場合には、支給額全額を損金とすることができず、法人税法に定める一定額(その事業年度中に支給した役員報酬額のうち、一番低い金額等を基準として損金算入額を計算する等)だけが損金となります。


2. 役員報酬を改定する場合のルール

 役員報酬の改定については、その改定が、 

  1. @ その事業年度の期首から3ヶ月以内(原則)に改定する場合
  2. A その事業年度中に役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更等(臨時改定事由)があった場合
  3. B その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したこと(業績悪化改定事由)により改定する場合

 において、「改定前」と「改定後から期末」までの役員報酬の額が同額であれば、上記1.の定期同額給与に該当するものとして取り扱われるものとされています。 

 したがって、上記のルールに沿った役員報酬の改定であれば、その支給額全額を損金とすることが可能となります。


3. 不祥事等により一定の期間のみ役員給与を減額した場合

 今回のご相談のように、会社の不祥事等を理由として年度途中で役員報酬を減額した場合には、上記2.のルールには当てはまらないと考えることもできます。

 しかし、 

  1. @ 企業秩序を乱した役員の責任を問うべく、一定期間の役員報酬の減額処分を行うことは企業慣行として定着していること
  2. A いったん支給した役員報酬をその役員が自主的に返還した場合には定期同額給与として取り扱われるのに、その実質が同じである役員報酬の減額処分について異なる取扱いとすれば著しくバランスを失することになること

から考えると、上記理由による役員報酬減額について、定期同額給与に該当しないとすることは適切ではないと思われます。 

 したがって、その役員に対する減給処分が、

  1. @ 企業秩序を維持して円滑な企業運営を図るため、あるいは法人の社会的評価への悪影響を避けるために行われるものであること
  2. A その処分の内容が、その役員の行為に照らして社会通念上相当のものであると認められる場合には、減額された期間においても引き続き定期同額給与の支給が行われているものとして取り扱って差し支えないこと

とされています。


 現代は、従業員やその家族を含め、誰でも簡単にSNS等で情報発信ができる時代です。
 働き方改革関連法の施行などと相まって、企業の法令順守(コンプライアンス)に対する意識が低いと、法令違反の事実についてそれらの情報発信手段を用いて簡単に世間一般に知れ渡ることとなり、社会から非難を浴びるような事態も実際に起こり始めています。

 不祥事の責任を取っての役員報酬減額は、これまでは大企業だけの事例と思われていたかもしれませんが、そのような状況を考慮すると、今後は中小企業でも起こる可能性があると考えられます。
 企業は、税理士や社会保険労務士などの専門家の意見を参考にし、コンプライアンス意識を今以上に高めて経営を行うことが、今後さらに求められるのではないかと思われます。


[参考]
 法法34、国税庁「役員給与に関するQ&A」、国税庁法人税相談事例など


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